今回の記事は
と思う人向け。結論を先に書くと
完全にキャッシュレスになった社会と、現金を使っている今と比較して、
個人・社会それぞれへのメリット・デメリットを挙げていきます。
社会の構造や人の意識が大きく変わるので、それに適応していく必要がありますね!
という内容です。
もくじ
現金がなくなった世界について考えてみた
こんにちは、キラです。
先日、こんな記事を書きました。
これらの記事、意外と検索流入なども多く、よく読んでいただいています。ありがとうございます。
今回はね。これら「実際に見てきた話」から一歩進んで、未来について考えてみる話です。
テーマは「完全にキャッシュレス化した社会はどうなるのか」。
「キャッシュレス化」とは
さて、そもそも「キャッシュレス」とは何か。
おさらいしておきましょう。
「キャッシュレス」というのは、「モノとしての”現金”を使わずにお金をやりとりする」ことの総称です。
「キャッシュ(現金)」が「レス(ない)」から、「キャッシュレス」ですね。
手形やクレジットカード、オンラインバンクでの送金などなど、とにかくモノとしてのお金を使わずに取引をすることを指します。
近年、スマホの普及やITサービスの台頭、そして近日だと(ビットコインのような)仮想通貨の普及で、
世界中でさらに本格的に、キャッシュレス化の波が来ているワケです。
完全にキャッシュレス化された社会はどうなるのか?
中国でのキャッシュレス化の影響を受けて、
「日本はキャッシュレス化が遅れている!」と言われだした今日このごろ。
こういう話題を見て僕がいつも思うのは、
ということ。
今回は、それについて主に「個人・社会」に対しての「メリット・デメリット」という観点で考えてみたいと思います。
前提として「世界中の人がスマホ端末などでの決済のみを行い、貨幣は使っていない」という状態を想定しています。
キャッシュレス化による個人のメリットは「荷物が減って時間が増える」
完全にキャッシュレス化された社会で個人が受けられるメリットは、一言でいえば「荷物が減って時間が増える」ことでしょう。
つまり、より身軽に自由になれる、ということです。
以下、詳しく書いていきます。
荷物が減る
現金を持たないようになったら、当然ですが荷物が減ります。
カバンやポケットの中から「財布」が無くなるのはもちろん、今ある銀行通帳や印鑑、レシートなどもなくなってしまうので、全体的に荷物が減ります。
これはやはり、大きなメリットです。
時間が増える
キャッシュレス化により個人が受けられうメリットで「荷物が減る」以上に大きいのは「時間が増える」ことでしょう。
または、「非生産的なことをしなくてもよくなる」と言ってもいいかもしれません。
例えば、
- コンビニなどでレジの回転が早い
- ATMに並ぶ必要ない
- 個人間送金によって割り勘がスピーディー
- 家計簿、経費精算、確定申告なども自動化できる
などなど、挙げていけばキリがありません。
つまり、
昨日先輩に建て替えてもらったゴハン代ちゃんと返さなきゃ。
こないだの出張費も会社に申告しないと。あれ?確定申告って何日までだっけ?
という用事が、全て無くなるワケですね。けっこうスゴイ!
この手の用事って、非生産的な割にけっこう面倒なので、これが無くなるのは個人にとって最大のメリットだと思います。
キャッシュレス化のメリット(社会)
続けて、社会全体で見たキャッシュレス化のメリット。
これもいろいろありますが、まとめて一言でいうと「ムダがなくなり、経済の流動性が上がる」ということだと思います。
経済の流動性が向上する
キャッシュレスが社会にもたらすメリットで一番大きいと考えられるのが「お金の流動性の向上」です。
つまりは「お金が回りやすくなる」ということ。
これは、具体的にはどういうことか。
まず現金を使わないので、個人でのタンス預金などができません。
小銭が無駄に残ったりすることもない。
お店での決済も簡単になるので、お金のやり取りが増えます。
結果として、お金が人や社会の中でぐるぐると周りやすい。
また、個人間決済やクラウドファンディングも手軽にできるようになるので、起業のハードルはさらに下がり、チャンスも多くなるでしょう。
↓写真は、中国上海の屋台。どんな場所でもスマホひとつで買い物ができます。
お金が回れば回るほど世の中の富の総量は増えます。
つまり、私達の生活が豊かになる、ということです。良いことですねー。
一部の犯罪や脱法行為の減少
完全にキャッシュレス化された社会の中では、今ある犯罪や脱法行為の一部が、減ったり無くなったりします。
例えば、銀行やコンビニ強盗。お店に現金がないので意味がなくなります。
現金がないなら、偽札の製造も意味がなくなります。
(実際、中国で急速にキャッシュレス化が進んでいるのは、これらの犯罪抑制も一つの目的のようです。)
そして、犯罪とはまた違いますが、脱税やマネーロンダリングなどの脱法行為もかなりやりにくくなります。
電子マネーでのやり取りでは必ずどこかにログ(記録)が残るので、「誰が誰にお金を渡した」というのが隠しづらくなるんですね。
資源の無駄遣いが減る
現金を使わなくなると、まずそれを発行するための紙や金属を使わなくなります。
そして、財布を持つ人が居ないので、領収書やポイントカード、割引券も電子化されていくでしょう。
結果として、これらを作っていた資源やエネルギーの無駄遣いがなくなります。
これも、社会にとってはメリットと言えるでしょう。
ATMやレジなどの無駄なインフラがいらなくなる
完全にキャッシュレス化された社会では、ATMやレジなど「現金を扱う」ためのインフラが必要なくなるので、お店や街がいくぶんかスッキリするかもしれません。
コンビニや飲食店からレジがなくなり、店員さんが居なくなる日も近いかもしれません。
以上が、ざっと考えられる、キャッシュレス化のメリットです。
キャッシュレス化のデメリット(個人)
世界全体がキャッシュレス化したときに出てくる(個人への)デメリットは、一言で言えば「社会構造が変わることによる適応問題」ですね。
つまり「いろんな部分が変わるから、それに合わせていかなきゃいけない」と。
例を挙げていきます。
お金の使いすぎや残金がわかりにくい人も
お金の使いすぎや所持金がわかりにくい!
キャッシュレス化にあまり積極的でなく、現金を使い続ける人の意見で多いのがコレです。
まあ慣れの問題だと思いますが、「あなたは今10000円持ってますよ」とスマホの画面に表示されるだけなのと、手元に一万円紙幣を持っているのとでは、
後者の方がわかりやすいし慎重に扱える、と考える人がまだまだ多いのは事実です。
(個人的には「現金数える手間が面倒じゃね?」とは思いますが)
サイバー犯罪被害の増加
先ほど、「強盗や脱税などの一部の違法・脱法行為は減る」と述べたのですが、
その逆に、サイバー犯罪などは増加し、それに巻き込まれる人が増えるでしょう。
例えば、他人のネットバンクや端末への不正侵入をしてお金を盗んだりする犯罪などがそうです。
空き巣などのリアル犯罪なら「戸締まりや鍵交換をすればいい」とわかる人は多いですが、
サイバー系の犯罪だと、抽象度が高くて、どんな対策をすればいいかわからない人がほとんどでしょう。
このように、テクノロジーの進化と社会構造の変化を狙ったサイバー犯罪などが増えてしまうのは、デメリットの一つですね。
一部の仕事がなくなる
テクノロジーによって社会の仕組みが変わると、それに合わせて、人間の仕事も変わります。
例えば、駅改札のきっぷ切りのオッチャンや、電話交換手などは、今居ませんね。
これと同じで、キャッシュレス化された社会では、一部の仕事が無くなってしまいます。
例えば、銀行員。
業務の大部分が自動化され、大規模リストラがあることは間違いないでしょう。
差別化のされていない公認会計士や税理士も居なくなります。
先述のように、会計や税務などが自動化されてしまうためです。
実際に、電子国家エストニアなどでは、これらの士業はすでに存在していません。
このように、一部の仕事は変わったり無くなったりしてしまうので、個人としてはそれに合わせて、自分の仕事やスキルについて考え直す必要があります。
もちろんこれにはデメリットばかりでなく、メリットもあります。
それは「新しい仕事が生まれる」ということ。
例えば、改札のきっぷ切りのおっちゃんや電話交換手は居なくなりましたが、代わりに改札システムやスマホを作るエンジニアという仕事が生まれました。
このように、キャッシュレス化によるメリットとデメリットは表裏一体なので、
これを読んでいるアナタは、情報を受け取りつつ少し先を読んで、未来に備えましょう。
キャッシュレス化のデメリット(社会)
社会単位で見た、完全なキャッシュレス化のデメリット。
これは一言で言うなら「資本主義が本来持っている問題が、(お金の流動性が上がることにより)さらに大きくなってしまう」ということに尽きる気がします。
つまり、「お金がまわりやすくなったせいで、問題がデカくなる」と。
以下、具体的に述べていきます。
経済的格差の拡大
今我々が生きているこの資本主義社会には、致命的バグともいえる特徴があります。
それは「お金のある所にさらにお金が集まりまくる」というもの。
以前、経済学者ピケティ氏が、著書「21世紀の資本」で指摘したのが、まさにこの問題です。
彼の主張を簡単にいうと
というもの。
例を考えるとわかりやすいかもしれません。
資本10億ある人が、年利5%で投資をすると、それだけで年収5000万。
さらには、資本を持っている人は信用も集めやすく、大きな仕事や投資話がやって来やすいので、資本はローリスクでさらに膨れていきます。
これが、資本100万からだと、まず年利5%で回しても年5万。
生きていくために労働をする時間が必要なので、考えたり人と会ったりする時間も少なく、お金はやはり増えづらいと言えます。
このような「富の集中」が起こるのが、資本主義経済の一種のバグなんですが、
キャッシュレス化でお金がさらに動きやすくなると、これがさらに加速するかもしれません。
なぜなら、お金の流動性が上がると、あらゆるビジネスのスピードや、投資効率が上がってしまうためです。
お金を持っている人と持っていない人の差がどんどんついてしまう、と。
そしてもちろん、キャッシュレス社会への順応や、IT・金融リテラシーにも個人差があるので、それによっても格差はさらに広がりそうです。
これは、資本主義が持っている問題を、キャッシュレス化が加速させてしまうデメリットと言えます。
非実体経済のバブルなども起こる
キャッシュレス化によって社会に生まれるデメリットに「バブルが起こりやすくなる」というのもあると思います。
近年あった、仮想通貨バブルなどがそうですね。
お金が形を完全に失って数字だけになると、仮想通貨のような非物質にも高い値段が付きやすくなります。
「お金が数字だけになること」は、お金が本質的な形に進化しただけで、悪いことじゃありません。
仮想通貨などの「共同幻想(存在はしていないが皆が信じているもの)」に価値が発生するのも、不動産や株式会社など、昔からあったことでこれも悪いことじゃありません。
(「共同幻想」については、ユヴァル・ノア・ハラリ氏の『サピエンス全史』に詳しいので、ぜひご一読を)
ただ問題なのは、「本質的な価値を無視して、値段だけが上がりすぎてしまうこと」です。
「皆が欲しがってるからくれー!!!」ってなったあとに「あれ?これ実はゴミじゃね?」となって、経済が混乱してしまう状態。これがバブルです。
キャッシュレス化によってお金の流動性が上がり、非実体(モノを介さない)経済にお金を使うのにさらに抵抗が無くなった人々は、このバブルを起こしやすくなるかもしれません。
これが、僕の懸念するキャッシュレス社会のデメリットの一つです。
メリットともデメリットともいえない「変化」
あとは、メリットともデメリットとも呼びにくい「キャッシュレス化によって起こる変化」について、書いていきたいと思います。
デジタルデバイスの復旧
これは結果というよりは原因ですね。
現金の代わりに、それを使うためのデジタル端末をすべての人が持っていないと、完全にキャッシュレス化された世界にはなりません。
最終的には、今のスマホのようなモバイル端末から、絶対になくさない生体端末にシフトしていくかも?
手の甲をピッとやったら支払い完了、みたいな。
「お金」の定義や認識が変わる
その昔、ゴールドを使った金貨だけがお金と認められていた時代がありました。
これが「印の付いた紙」がお金として使われるようになり、人々の「お金」の認識も変わりました。
これと同じような変化が、これからの時代に起こります。
すでに、紙とコインから、端末に表示された数字が「お金」になっていますね。
現金を見たことのない世代が持つ「お金」の認識は、きっと我々とは異なるハズです。
お年玉などの文化が変わる
中国ではすでに、新年のお年玉をWeChatPayで送る、というのが普通になっていたりします。
このように、お金の形が変わると、既存の文化もいろいろ変わるでしょうね。
既存のビジネス構造が変化する
ビジネスの構造も大きく変化します。これは前述した通りです。
ITが普及したことによって、年賀状の売上は落ち、代わりにLINEスタンプなどの市場が生まれたように、
キャッシュレス化によっても、無くなる仕事、新しく生まれる仕事がたくさんあります。
今のビジネス、というよりは人間の経済活動全体に、大きな変化が出てくるでしょう。
個人情報セキュリティの重要性が増す
これも先述の「サイバー犯罪の増加」と似たことなんですが、
当然、個人情報のセキュリティはさらに大事になってきます。
パスワードなどはもちろんなんですが、指紋や角膜などの、身体に基づいた情報の重要性も上がるかと。
個人の生体に関する情報は、あらゆる企業の間で取り合いになるでしょうね。
その人の生活に合わせてピンポイントで商品やアプリをオススメして、キャッシュレスですぐに買わせられたりするワケだしw
ゴールドなどの実体資本の価値の向上
仮想通貨などの非実体経済が盛り上がる一方で、金(金属のゴールド)などのモノ資本の価値も上がると思います。
ゴールドなどは、経済が不安定なときによく買われるんですね。
価値や値段が安定していて、貨幣や株がダメになっても一定の価値をキープしてくれるから。
さいごに―お金とは何なのか
という感じで、小難しい話をつらつらと書いてみたんですが。
最後に、僕のスタンスと、「そもそもお金とはなにか」についての考えを書きます。
僕は、キャッシュレス化に賛成です。
理由は、「物体を伴わない方が、お金の本質に近い状態だから」。
僕は、お金を「信用から生まれて、人間が値段を付けたあらゆるものと交換できる数字」と考えています。
そう、「数字」なんです。
聞いた話では、1万円札を作るのには20円くらいのコストがかかり、1円玉を作るのには2円のコストがかかるそうですw
なんか「?」な話ですが(笑)要はあの紙やコインそのものには価値はなく、そこに印字された「数字」に意味があり、その数字で皆が交換に応じてくれることが大事なワケです。
そしてそもそも「価値」というもの自体、人間が皆で一緒に信じている「幻想」の一つです。
幻想の上で成り立っている我々の社会で使われるお金もまた、形のない幻想。
なので、それを物質で持たない方が、皆が本質について理解しやすい。
僕はそう考えています。
キャッシュレス化は絶対に止まらない
そしてもう一つ。
そもそも、個人の賛成/反対に関わらず、全世界キャッシュレス化の流れは、絶対に止められません。
なぜなら、社会にとっても個人にとっても「そっちの方が効率がよく、便利だから」。
過去のあらゆるテクノロジーを見ても、人間は絶対に「便利」には勝てないんですね。
現在、中国でキャッシュレス化が進んでいる理由も、結局は「そっちの方が便利だから」という理由だけです。
日本が未だ現金至上主義なのも、「日本で生活する上では、そちらの方が便利」と考える人が多いからです。
しかし、日本でもどこかのタイミングで、キャッシュレスの方が便利でおトクになる時が必ず来ます。
その時は日本でも一気にキャッシュレス化が進み、その後は二度と今のように貨幣メインには戻らないでしょう。
現代に生きる我々が、もう金貨を使わないように。
テクノロジーによる変革というのは、不可逆(元にもどらない)ものなのです。
なので、今の僕たちにできるのは、未来を予想し、それに備えることだけです。
まとめ
そんな訳で改めてまとめると、今回の記事は
今「キャッシュレス」が色々話題になってるけど、このまま現金使っててもいいんじゃない?
もし、完全にキャッシュレスな世界になったら、どうなるの?
と思う人向け。結論を改めて書くと
完全にキャッシュレスになった社会と、現金を使っている今と比較して、
個人・社会それぞれへのメリット・デメリットを挙げていきます。
社会の構造や人の意識が大きく変わるので、それに適応していく必要がありますね!
という内容でした。
それでは今日はこのへんで。
明日も、よい人生とよい旅を。
今「キャッシュレス」が色々話題になってるけど、このまま現金使っててもいいんじゃない?
もし、完全にキャッシュレスな世界になったら、どうなるの?